見ていたよ。あの雲の上から。
文 つっきん

おかあさん、あのね
あたし、生まれる前からおかあさんのこと 知ってたよ。

だって あの雲の上から 見ていたんだもの。

神さまと一緒に。
やさしい 人だったよ、神さま。
おじいさんだったと思う…
白い衣で…

…思い出せるのはそのくらい。

覚えているのは
神さまとあたしたちは
白い雲の上をふわふわ歩いていたということ。
静かに静かに歩いていたということ。

神さまのいる場所には
たくさんのお友達がいたよ。

しんちゃんも いたよ。
弟のしんちゃん。
いっつも遊んでいたんだもの。
っていうか、しんちゃんがついてきてたっていうか。

・・・

ある日、神さまとお散歩していて
その日はどういうわけかふたりっきりで。

雲の上に寝っころがって
地上を見ていて

目が止まったの。
飛び込んできたって感じ。
…女の人。

「この人!この人がいい!」
見つけた!って思うより早く
あたしは そう叫んでた。

そのとき、その人とても可愛らしく笑ったんだー。
こっちを見て笑っていたわけではないのに
笑顔があたしをわくわくさせたんだー。

おかあさん のね。

「神さま、あたしあの人の所へ行くね。」
そう言うと、神さまは
「そうですね。」
そう言って、あたしをそっと白い衣の中に包んでくれた。

あたしはどんどんどんどん

白い白い闇の中へ


白い闇の中へ


まっ白な












 み


  の…



 な…



か…





どのくらいの時間がたったのだろう。
よくわからないのだけど

目が覚めた場所は
あたたかい 腕の中だったよ

おかあさん のね。


神さまが言っていたことがあるの。
「いろんなことが ありますよ。」

いろんなことって

いいことばかりじゃないってことだよね。

でも「大丈夫」なんだって。
そう言ってたよ、神さま。

おかあさん

あたしは あの雲の上から おかあさんを 見ていたよ。

あたしが 見つけたの。
あたしが 選んだの。

・・・

あと、しんちゃんのことだけどね
たぶん、あたしについて来ちゃったんだ。やっぱり。

神さまに包まれたときに
「待って待ってーー」って
かわいい声が聞こえた気がしてたの。

しんちゃん のね。

しんちゃんのことだから
神さまにお願いお願いお願いってお願いしたんじゃないの?

しんちゃん らしいよね。

・・・

おかあさん

あたしは あの雲の上から おかあさんを 見ていたよ。

あたしが 見つけたの。
あたしが 選んだの。

だからね

笑ってて。

無理しなくていいんだけど
笑ってて。

いつもみたいに。

それだけで 
あたし うれしくなれるから。

ね。


*おしまい*
©tukkin 2004.1


BGM*見上げた空*

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