ある薬売りの話
文 つっきん

さぁさ、みなさま、お立ち会い。
ここにとりだしたりますは
秘伝!秘伝の妙薬なり。

傷口にちょっちょっとぬれば、あら不思議
顔のシミにちょちょっとぬれば、あら不思議
なんなら、ちょいとそこの娘さん
あっしが、塗ってさしあげましょか?
ほれほれ、なーんもこわくない。

世の中不思議不可思議巨万とあって
信じる信じないはおのれしだいと申します。

さぁさ、みなさま お立ち会い、お立ち会い。

村人たちがわんさかわんさか集まって
妙な薬が売れていく。
どんどん飛ぶよに売れていく。

ほっかむりした怪しい商人
にやりにやりと ほくそ笑む。

やがて妙薬 売り切れご免。
夕暮れ時だ。腹も減る。

さて、我が家へ急ぎ足。抜き足差し足ぴょんぴょこぴょんですたこらさ。

ぴょんぴょこ ぴょんぴょこ すたこらさ。
ついたところは、暗く寂しい沼のふち。

「やれやれ、今日もひと仕事終わったわい。」
ほっかむりをとった男は、なんとなんと。

高下駄はいた、がまがえる。

キセルを一服。
飛んでるハエをぺろりとひとのみ。
小金に にんまり。
わしは、世界一の小金持ち。
どうだ、どうだと、空威張り。
こわいものなぞ、あるかいな。
人間なんざ、ちょろいもの。
よさげな でまかせ言いまくり
いざとなったら
んがっと一声あげてやりゃ
ぎょっとめん玉ひんむいて、じわりじわりとあとずさり。

ゲーロ、ゲロゲロ、ゲーロゲロ。

そのとき、うしろの暗闇から、かよわい女の声がした。
「もうし、薬売りどの、薬売りどの。」

なんと昼間の娘がそこにいた。

とっさのことであわてふためき
んがっと一声、思わずあがる。
ぎょっとめん玉ひんむいたのは、娘じゃなくて がまがえる。

月夜に照らさし出されその顔は、見るも無惨なあばた面。

「あなた様は、私の本当の姿ががまがえるだと教えてくださいました。
どうぞ、あなたのお嫁さんにしてください。」

そんな、そんな。
どうしてそんなことになるのやら。

がまがえるが、夜な夜なお月さんに願うのは
「美しい人間の娘をお嫁さんにもらいたい。」であったのに。

まてよ、まてよ?
がまがえるは 考えた。
めん玉くるくる考えた。
そこへピンッとひらめいた。

そうだ!この娘の顔をきれいに治してやったなら
わしの願いは叶うのだ!
娘もますますわしに惚れ込もう。

わしは世界一の小金持ち!
みなぎる自信に心も躍る。



次の日。

がまがえるは、ほっかむりをしてそそくさと
娘の手をとり、村をめざしていそいそいそいそやってきた。


チャリンチャリンチャリンと金の音。
「名医、名医はおらんかね。金ならここに、いくらでも。」

「はいはい。わたしが村の名医です。どらどら、この娘さんが・・・。
なるほど、これは、まぁひどい。
あなた、いくら持っておいでです?
なんだ、それっぽっちじゃ足りません。もっとお金がかかります。」

「なになに、負けてはくれぬのか?」

「では、負けてあげましょう。あなたの持ち金全部で手を打ちましょう。」

「全部とな!ええい。しかたあるまい。よろしく頼む。」

「へいへい。では、いざ治療といたしまひょ。」

ちょちょいちょいちょい

いじきたなくともさすがは名医。
あっという間に娘の顔はもとどおり。
いえいえ、最初にあったシミまできれいさっぱり消し去った。

大喜びの がまがえる。
「さぁさ、娘さん。今日からあんたはわしの嫁じゃ!」

すると、娘はこう言った。
「いやじゃ!だれが、あんたの嫁だって!?気色悪いったらありゃしない。
みんな!こいつはにせの薬を売りつける悪いヤツだよ!
とっととつかまえて、ふみつぶすなりしておくれ!」

あれよあれよと人だかり。

がまがえるは
とうとうとっつかまって
村人にさんざんな目にあわされた。

そして最後に、風船のごとく腹いっぱいに空気を入れられ
ぷしゅーーーっと天高く空のかなたに飛ばされた。



それから、がまがえるはどうなったか。

さてね。
そのまんま死んじまったか
もしかしたら、うまく生き延びておって
どこかの村で同じことを性懲りもなくやってるか。

バカは死ななきゃ治らない、と昔から申しましてな。

うまい話にだまされてはなりませぬ。
ご用心、ご用心。


*おしまい*
©tukkin/sayako 2004.10


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