えんま  
文 つっきん

しゅうたは さらりと うそをつく。

=ひとつめの うそ=

たくちゃんが 「ぼくのシャーペン しらない?」と きいてきたとき。
しゅうたは そしらぬ かおで 「しらない。」って いったんだ。
ほんとは しっていたけどね。
さっき ろうかにおちてるの みたばかり。

=ふたつめの うそ=

よっちゃんが 「きょう あそべる?」と きいてきたとき。
よっちゃんは のろまで どんくさくて めんどくさい。
「さっきさ、かあくんが よっちゃんのこと さがしてたよ。」
「ほんと?」
よっちゃんは そそくさ むこうへ はしっていった。ふふふん。

=みっつめの うそ=

「しゅうた しゅくだいは?」
かあさんの くちぐせだ。
「きょうね、せんせい しゅっちょうで なし なんだ。」
「あら、そう。」
ひひっ。ちょろいもんだ。
あしたは 「わすれた。」って いえば いい。


しゅうたは きがつかなかったけれど
うそをひとつ つくたびに 
しゅうたの せなかに くろくて まるい かげがくっついていく。

    ひとーつ かげが ひとーつ ついた
    ふたーつ かげが ふたーつ ついた
    みぃーつ かげが みぃーつ ついた

へへーん、うそなんて たいしたことない。ばれなきゃ いいんだ。

    よーっつ かげが よーっつ ついた
    いつーつ かげが いつーつ ついた

とうとう…
 
    とうとう じっこの かげ ついた!

すると、しゅうたのせなかに くっついてきた くろいかげが

    もこもこもこと もりあがり、
    もじゃもじゃもじゃっと かみ なびき、
    くっきり はっきり いろがつき、
    むんずむんずと おきあがり、
    ぱかっと おおきな めが ひらき、
    がはっと まっかな くち ひらき、

つづいて
    すっぽすっぽと はなの あな
    にょきにょき ぱっ! と おおきな て
    にょきにょき どしん!と はしらみたいな ふとい あし

そいつは ニィィと しゅうたにかおをちかづけ こう いった。

「しゅうたぁ、おまえのおかげで わし ここに うまれた。」
「あんた、だれ?」
「わし えんま。」
「じごくの えんま?」
「おう。」
「なにしに きたの?」
「わし おまえ きにいった。いっしょに あそぶ。」
「…うん!あそぼう!」

…しめしめ、えんまが ともだちだ。
しゅうたは これなら こわいものなし!と にんまりした。

えんまは ぐーんと りょうてを のばし、
ぐるんぐるんと そらを かきまわし、
まっくろい 「かちかちやま」にでてくる
どろぶねみたいな あまぐもの ふねを ふたつ つくった。

おおきいの と ちいさいの。

「こっち おまえの。」
そう いいながら えんまは ちいさいほうに しゅうたを ひょいと のせた。

「なんか ださい ふねだなぁ。 つくりなおしていい?」
「ああ。おまえの おもう とおり。」

しゅうたは みようみまねで くもをかきまわした。
おもしろいことに くもは まるで ねんど だった。

いいぞ!
しゅたは ふねのりょうがわに つばさをつけた。
コックピットもつくった。
プロペラも エンジンも つけた。
かっこいい ひこうきに うまれかわった。

「どうだい? かっこいいだろ?」

えんまのほうを とくいげにみると
そこには きょだいな どうみてもトマトが ぽっかり。
「おーい、えんま!」と よんでみると、
「なんだぁ?」とトマトのなかから こえがする。
「なんだ、それ?」
「これ せんかんトマト。」
はぁ?
すると、トマトのうえはんぶんが ぱっかり あいて
えんま とうじょう。はためく はたには ドクロのマーク。

「ちょっと、なんか さっきから ずるくない?」
しゅうたが すねてみせると
「ずるくない。わし えんま。なんでも おもいどおり。」
えんまは ごっついかおのくせに すずしいかおして そういうと
まっかな くちを がはっと あけて
「しゅっぱーーーつ!」
と いうと ぶっほーと ほらがいを いっぱつ ふいた。

ブルンルンルン

しゅうたのひこうき エンジン ぜんかい。
しゅうたと えんま そらを ゆく。

    ひゃっほー!

くものあいまを ヒュンヒュン すすむ。

    バキューン、バキューン

しゅうたは ひこうき とうさいの ミサイル はっしゃ。
めのまえのくもに めいちゅう。ぶさっとちぎれ くもは きえさる。

    き・もち いいーっ

みれば せんかんトマトの えんまも あわあわの かえんほうしゃを はなちつつ
くもで つくった おおきな たちを ふりまわしてる。
まわりの くもを ザンザ ザンザと きりはらう。

    かっこいい!

しゅうただって まけてない。
くうちゅう アクロバットひこうで ちゅうがえりっと。

    おまえ やるな。すごい!

ひとしきり あそんだら
ゆったり しゅうたのひこうき、えんまの せんかんトマト、
なかよく ならんで ぽっかりこ。
そらの まんなか ぽっかりこ。

「なんで ぼくと あそぶの?」
「おまえ うそつき。きにいった。」
「えんまって うそつきの したを ぬくんじゃないの?」

とたんに
えんまのかおは みるみる まっくろにかわっていき、
めは かあっとみひらかれ、くちからは ながくておおきな キバがでた。

「おまえ うそはわるいって こころのなかで おもってる!
おまえ もう きらい!」

そういうと、えんまはもっていた たちを ふりあげた。

「おまえ ほんとは なにものだ!?」
「わし ただの あくま。おまえ きらい! もう きらい!」

バサッと たちは ふりおろされた。
しゅうたのひこうきは まっぷたつに きりさかれ、
しゅうたは まっさかさまに ちじょうめがけて おちてった。


    ブラーン



しゅうたは こうえんの まつの木のえだに ブラーンとひっかかっていた。
パタパタと かけてくる いくつかのあしおと。
たくちゃんや よっちゃんや かあくんたちだった。

「しゅうたぁ、そんなとこで なにしてんだ?」

しゅうたのしんぞうが ぎくりとして どきどきした。
からだが かぁっと あつくなった。
これは…はずかしいって ときの はんのうだ。

おもわず
「木に のぼってて あしすべらせたのさ。」
と いおうとしたけど、こえが でない。

かおが みるみる まっかになった。
しゅうたは おもった。
   
    いま ぼく すごくかっこわるい!

「あのさ…あのさ…、たすけてぇ!」

「よぉし!しゅうた きゅうしゅつ だいさくせんだ!」

みんなは はしごをもってきたり、木のねもとにおちばをいっぱい しきつめたり、
木にのぼってきてくれたり。
おかげで しゅうたは ぶじ きゅうしゅつされた。

    もう えんま、いや、あくまには あいたくないぞ!

うれしはずかし
しゅうたの とんでもない一日の おはなしは、
これで おしまい。



*おしまい*
©tukkin/Kiyoko Kishino2005.9.25


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