4番目の球根
文 つっきん

 ふゆがくるまえの あたたかいひでした。
たえは、3つのきゅうこんを あきえさんからもらいました。
「チューリップのきゅうこんよ。あか、しろ、きいろ。はい、どうぞ。」
 あきえさんは、みんなから
「はなのびょういん」と よばれています。
 あきえさんは、はなのことならなんでもしっていて、しおれそうなはなも
あきえさんのてにかかれば やがてげんきになるからです。
たえがもらったきゅうこんだって、もうちゃんと なにいろがさくか しっているのですから。

「ありがとう」
 にっこりわらった たえのめに、ぽつんと ひとつのきゅうこんが みえました。
たった ひとつ、はなだいのすみっこ。
「ねぇ、あのきゅうこん…」
「あ、あれね。あれもチューリップなんだけど…。さかないのよ。
くさっているところがあるから。でも、どうしようかなぁって。すてるのもかわいそうだし。」
 そのとき、ぷるるときゅうこんがふるえたように みえました。
       ぷるる るる、ぷるる るる、ココハサムイヨ
 やっぱり ふるえてる!
「あきえさん、あのきゅうこん もらってもいい?」
「いいけど、さかないわよ。」
「うん、でも、うえてあげたい!」
 たえの しんけんなかおに あきえさんは、こまったようなかおをして
「ほんとに いいのね?」
と ききました。たえは こくんと うなづきました。
「じゃぁ…きやすめにしかならないけど これは つちをげんきにするくすりよ」
 あきえさんは じょうざいをひとつぶ おまけに くれました。


 いえにかえった たえは さっそく にわに きゅうこんを うえました。
「えっと、きゅうこんのへこんだところのむきがそろうように うえるっと。」
 そうすると はっぱのむきがきれいにそろうんだって あきえさんが おしえてくれたのです。
「1ばんめ、あか。2ばんめ、きいろ、3ばんめ、しろ。きれいにさいてね。
4ばんめ、ぷるるとおくすり。あたたかくなったら、でておいで。」

 そろそろ あたたかくなりはじめたころ。
3つのきゅうこんは そろって めをだしました。
4ばんめのぷるるは まだでてきません。
「あか、しろ、きいろ、きれいにさけよ。
4ばんめのぷるるちゃーん
もうすぐ はるだよ。でておいでー。」
 たえは きっとでてくるって しんじていました。
だって、あのときふるえてたもん。サムイヨってきこえたもん。
いきてるんだもん。

「チューリップのかおりって、どんなだっけ?におうんだっけ?」
 みずやりをしながら、たえははなしかけます。
3つのきゅうこんからでためは すくすくのび、
あざやかなみどりのはっぱを からだにみにつけて つんとすましています。
そのときです。

ポ…コ
「うわぁ、でたー。めが でたー!」
よわよわしいきみどりいろのめです。でも、きせきです。
「よーし、きっと、さけるよ。」

 ぷるるのめがでたことで たえのにわも なんだかにぎやかになりました。
みみずが のそのそ おうえんにきました。
すずめも ちゅんちゅん おうえんにきました。
あたたかい あめが しとしと シャワー。
そよそよ かぜが 「まもなく はるが きますよ」の うれしいたより。
3つのチューリップもつぼみをふくらませて
ちょっと、ぷるるのほうへかおをかたむけ みまもっています。

 ぷるるは がんばりました。
ちょっとずつ ちょっとずつのび、とうとうちいさな かたいつぼみをつけました。
「もうすこし!きっと、さく!」

 1ばんめのつぼみが ぱっ。 あざやかな あかいチューリップ。
 2ばんめのつぼみが ぱっ。 きらめく きいろのチューリップ。
 3ばんめのつぼみも ぱっ。 しみひとつない まっしろのチューリップ。

 さぁ、あなたのばんよ、4ばんめのぷるる!

 ところが つぼみは かたいまま。
それどころか どんどん いしのように かたくなっていくのです。
やがて、 ぷるるのつぼみは おじぎをするように まえへたおれ
たえのめに ぜつぼうの なみだが あふれはじめました。
つぼみが ぽたりと じめんへ おちたとどうじに 
たえのなみだが ぽろりとつぼみのうえにおちました。

     パ・・・チン

 つぼみが おとをたてて はじけて きえました。
そのとたん、やさしいかおりが あたりに たちこめました。

「…せっけんのにおい!」

 はるのかぜが やさしくふいてきて、まちじゅうに せっけんのかおりをとどけました。
あきえさんにも とどきました。
「いい、におい。」
 そこへ たえが ほほを そめて はしってきました。
「あきえさん、このにおい、あのチューリップのにおいなんだよ!」
「え、チューリップの?」
 あきえさんはしんじられないような かおをしました。
 
「あきえさんの おくすりが きいたんだよ。」
 たえのことばに あきえさんは くびをふりました。
「たえちゃんは、きっと あのきゅうこんにとって おかあさんだったのね。」
 
 …ぷるる るる 、 ぷるる るる…わすれないよ、わすれない。
 

©tukkin 2000.2

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