あさがおのさかなつり 

文 つっきん

ふうちゃんの おしごと。
朝、ベランダのあさがおに 水をあげること。

とっても早起きな あさがおよ。
だって、ふうちゃんがベランダに出るときは
たいてい もう パッと咲いているもの。
早起き勝負、
あさがおの 勝ち。
ふうちゃんは ずっと 負け続け。

昨日の夕方も たたんだ傘のようなつぼみがあったもんね。
今朝はどうかな、どうかな?
そーっと、そーっと。
物音でつぼみが開いちゃうのかもしれないし。

今朝は まだつぼみのまま。
やった!今朝の勝負、ふうちゃんの 勝ち・・・?

・・・ピッ・・・
う、動いた?

ふうちゃんは、ゆれたあさがおの つるを見た。
べつに、なんてことないな。
かわってるといえば 
つるが やわらかなへの字に ちょっと たれ下がってるくらいかな。

・・・ピッ・・・
への字に ピッと 力が入る。
カタカナの「ヘの字」になったよ。

・・・ピッ・・・
ふうちゃんの目にも力が入る。

とつぜん への字の短い方が
ぐーーっと下へ引っぱられたかと思うと
ビヨォ〜ン  
上へ 跳ね上がった。

「やった! 釣れた!」
ちいさな ちいさな 声がした。

ちいさな声の主は
あさがおの つるの 上にちょんといた。
顔は帽子でよく見えない。
あさがおをすっぽりかぶったような へんてこな 帽子。
白いブラウスに緑色の服・・・
背中に釣り竿しょってるよ。

「よっ」
っと、一声。
ひゅんと つるが への字に たれ下がる。

しばらくすると 

・・・ピッ・・・
への字に ピッと 力が入る。
また カタカナのへの字になったよ。

・・・ピッ・・・
ふうちゃんの目にも力が入る。

とつぜん への字の短い方が
ぐーーっと下へ引っぱられたかと思うと
ビヨォ〜ン  
上へ 跳ね上がった。

「やった! また釣れた!」

ふうちゃんの目は すっかり くぎづけ。
こびととか 妖精っていうものにであうと だれだって くぎづけになると 思うよ。

ドキドキ、ドキドキ
声をかけても いいのかな?
声をかけてみなくちゃね。

「ねぇ、何が釣れたの?」
「さかなだよ。」
「さかな?どこに?」
「たくさん泳いでいるだろ? ほら、きみの鼻のところにも。」
ふうちゃんは、頭をうしろへ動かしてみたけど なぁんにも見えない。

「見えないの?これだから 人間は困るなぁ。」

ふうちゃんは たたたっと うちから虫眼鏡をもってきた。
なんでもでっかく見える虫眼鏡。これなら・・・

「あ、ほんとうだ!」
ふうちゃんの目の前に
あさがおのまわりに
きらきら、きらきら、すいすい、きらきら、きらきら、すいすい

ガラス玉みたいなきれいなさかなが たくさん、たくさん泳いでいる。

「見えた?」
こびとだか、妖精だかは ふふんと笑って 聞いてきた。
「うん」

ふうちゃんは、こびとだか、妖精だかの顔を見た。
目がきょろんと 大きくて、口は あんがい小さい。
「顔、でかいね。」
と ふうちゃんがいうと
「虫眼鏡で見てるじゃないか。」

「あ、そうだった。」
ふうちゃん、えへへと 照れ笑い。

ふうちゃんは、また 聞いてみた。
「その さかな どうするの?」

「食べるのさ。」
「だれが?」
「ぼくらが。」
「どうやって?」
「煮たり、焼いたり、さしみもおいしいよ。」
「ふーん。」

「なんであさがおのところに いるの?」
「ある日、ぼくが、ベランダのさくで さかなつりしてたらさ、
あさがおが 言うんだ。
わたしのつるをつかえば、もっと釣れるって。
わたしも さかなが 大好きだって。」

「あさがおも さかな 食べるの?」
「食べるよ。このあさがおは さかなが大好物なんだ。」
「へぇぇ〜」
と おどろく ふうちゃんをしり目に
こびとだか、妖精だかが さかなを つぼみにさしだすと
「ペロリ」
と 当たり前のように 食べて・・・
ゆっくり、ゆっくり・・・
花が 開いた。
つやっつやの 青い 花。

あさがおが 咲くところ、初めてみた。
ここに泳いでるさかなを食べて 咲いていたのかぁ。
ふうちゃんは ドキドキした。

「このさかな どんな味がするの?」
ふうちゃんも あさがおの花みたいに ぱっと口を開けてみた。
・・・さかなは ちっとも 入ってこない。
すいすい、きらきら 素通りしてく。

「あはは。さかなだって ばかじゃない。
1匹 あげるから、これで かんべんしてよ。」

こびとだか 妖精だかは
ぱかっとあいてる ふうちゃんの口へ さかなを放りこんでくれた。

キラン ☆
・・・そう、キラン☆ とした 味がした。

「ありがとう!」
そういったときには
こびとだか 妖精だかの姿は、ふっと どこかへ消えていた。

「さぁて、朝ご飯食べて、今日はさかなつりしようっと!」

ふうちゃんが、たたたっと おうちへ入ったその姿。
こびとだか、妖精だかは、つるの陰から そっとみていた。

「はぁ、びっくりした。」
そっと、胸をなでおろしながらね。


©tukkin 2001.8

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