かぎあな


 こうえんであそんでいた たくちゃんは
じぶんのかげが へんなことにきがついた。
あたまがきれいに まあるくて、
からだが きれいに ながしかく。
これって ほんとに ぼくの かげ?

「わたしは、とくべつなかぎあな。
かぎがないから あけられない。
ここは ありのいえ。」
 とつぜん かげがしゃべったので、たくちゃんびっくり あとずさり。
そいつは ほんとに たくちゃんの かげなんかじゃない。

 だって かげなら かならず ぴったりくっついてくるはずだ。
なのに ぽんっと たくちゃんが あとずさりしたぶん はなれている。
かぎあなが 
「とくべつだよ ちょっとのぞいてもいいよ。」
と、にやにやしたこえでいうので、
たくちゃんは かぎあなのおくを あながあくほど じいとみつめた。

 すると、じめんのなかが うすぼんやりとみえてきた。
 そこは まるで おとぎばなしの おおひろま。
まんなかに まっしろな さとうのやま。
きらきらした キャンディーのかけらで かざられて ツリーみたい。
 ツンタッタ、ツンタッタ、ツンタッタッタ
いる いる、サンタのかっこうをした ありも ちゃんといる。

 たくちゃんは うっとり ながめていた。
 とつぜん、めのまえが ただの じめんに もどったので
あれ? と かおを あげてみると
かぎあなが ゆらゆら とんでいく。
「まってよー、まって、まって」
 かぎあなが ぴたっと とまったところは
ふるい ものおきごや。
 ここは めつきのするどい くろねこのすみかだ。
しょっちゅう ほかのねこと けんかをするし
ここへちかよろうとすると フーフーけをさかだてて、
とびかかってくる。

 たくちゃんは そおっとちかづいて 
かぎあなのおくを あながあくほど じいとみつめた。

 くろねこは いた。
みたことのない とてもやさしい めで、
いちわの すずめの からだを やさしく なめて いる。
すずめが はねをうごかそうとするけれど 
けがをしているから とべない。
ねこは やさしく なめていた。

 ふいに かぎあなが ふたつになった。
「たく、なにしてんだ?」
「あ、パパ」

 ふたつならんだ かぎあなは かぎあなじゃなくて
たくちゃんのかげ。パパのかげ。
「さ、かえろう。ママが まってるよ。」

 ガチャリ
げんかんのかぎがあいて、なかから
「おかえりー」
と いつもどおり ママのこえ。
「きょうは、シチューにしたのよ、たべましょう。」
「はーい!ねぇ、ママ、ミルクある?」

 そのよる、ものおきごやのまえに
ちいさなおわんが ひとつ そおっと おいて ありました。

©tukkin 1999
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