くもとかくれんぼ
文 つっきん


 ちいさな おいけに きんぎょがいっぴき。
「たいくつだなぁ」
 ポコンとためいきをひとつ。
「きんぎょすくいのスリルがなつかしい。」

 ひとりごとのつもりでいったのに、
なんでもいってみるものです。
 
「きんぎょくん、ごきげんいかが?」

 とおくのほうでこえがしたので
きんぎょはめをぱちぱちさせて
こえのぬしを さがしました。

「ぼくと かくれんぼ しない?」
 こえのぬしは しろいくも。
あおいそらに しろいきんぎょが
ぽっかり ぽっかり

おいけの きんぎょは うれしくて
「いいね いいね」
おびれをばたばたさせました。

「ぼくが かくれるからね。
きんぎょくんは めをとじて。」

「もういいかい?」

「もういいよ。」

 きんぎょは めをぱちぱちさせて
くもをさがしました。
「みーつけたっ、えんとつのところ」

 もくもく もくもく 
けむりのふりをしているよ
「じゃあ もういっかい」

「もういいかい?」
「もういいよ」

きんぎょは また 
めを ぱちぱちさせました。

かもめの むれに いちわだけ
とんでいるふりをしているよ
「みーつけたっ」

「もういいかい?」
「もういいよ」

きんぎょは またまた
めを ぱちぱちさせました。

おおきな すぎの きのなかに
えだのふりをしているよ
「みーつけたっ」

「きみは とても いいめを しているね。
かなわないよ」
「きみこそ へんしんできるなんて 
すてきだね。」

 とつぜん くもが
「はっくしょん!」
と、くしゃみをしました。
「どうやら かぜが ふくらしい。
ぼくらは そろそろ おわかれだ。」

「さようなら またあえる?」
「きみがみつけてくれればね。」

 かぜが ぶわっとふいてきて
くもは とおくへとんでいきました。

 ちいさな おいけに きんぎょが いっぴき。
「くもくん、
こんどは もっと じょうずにかくれろよ!」
 きんぎょは ちょっぴり とくいげに
めを ぱちぱちぱちっと させました。

©tukkin 1999

BACK