さくらに だっこ


 ちいさな  みどりいろのかえるが じめんから かおをだしました。
あたりを きょろ きょろ
「おはよう かえるくん。いいてんきだね。」
 かえるがかおをだしたところは ちょうどさくらの きの ねもと。
「ふー」
かえるは ちいさなためいきをつきました。
「どうしました?」
「あのね、はるだからって  じめんからでてきたけど
ドキドキが とまらないんだ。からだが はれつしそうだよ。」
「それは たいへん!そのドキドキ わたしが もらいましょう。」
「え?どうやって?」
「どうぞ わたしに だきついて」
 かえるは ぴったりと さくらのふといみきに だきつきました。
 ぽ・・・さくらのはなが ひとつ ひらいたよ・・・

 おや、また だれか きましたよ。

 わかものの つばめが いちわ とぼとぼと。
「ふー」
つばめも ちいさな ためいきをつきました。
「どうしました?」
 さくらのきが こえを かけました。
「じぶんで すをつくりなさいって おかあさんとはなれたけど
どうしたらいいのっておもったら ドキドキしちゃう」
「それはたいへん!そのドキドキ わたしが もらいましょう。」
 わかもののつばめも ぴったりと さくらのふといみきに だきつきました。
 ぽ・・・さくらのはなが またひとつ ひらいたよ・・・

 おや、また だれか きましたよ。

 2ひきのこいぬをつれた おかあさんいぬ。
こいぬは しっぽふりふり おかあさんのあとを ついていきます。
「ふー」
 おかあさんいぬは ちょっとおおきな ためいきをつきました。
「どうしました?」
「2ひきの こいぬがうまれたけど けがをしないか びょうきをしないか
ドキドキ ドキドキするのです。」
「それはたいへん!そのドキドキ わたしが もらいましょう。」
 おかあさんいぬも ぴったりと さくらのふといみきに だきつきました。
2ひきの こいぬも まねっこして さくらのふといみきに だきつきました。
 ぽ・ぽ・ぽ・・・さくらのはなが ひとつ、ふたつ、みっつ ひらいたよ・・・

 おや、また だれか きましたね。

 ピカピカのランドセルをしょった おんなのこ。
「くすん くすん」
 なみだが すこし あふれています。
「どうしました?」
「あたらしい がっこうは しらないひとばっかりだし、しらないことばっかりで 
ドキドキして むねがいたいの」
「それはたいへん!そのドキドキ わたしが もらいましょう。」
 おんなのこも ぴったりと さくらのふといみきに だきつきました。
 ぽ・ぽぽぽ・・・さくらのはなが ぽぽぽ と ひらいたよ・・・

 おやおや、こんどは だれかしら?

 おや、このせいふくは おまわりさん。

「ふうぅぅ」
 おまわりさんは ずいぶん おおきな ためいきを つきました。
「どうしました?」
「おまわりさんに なったばかりで ドキドキ ドキドキ するんです。」
「じゃぁ、そのドキドキ わたしが もらいましょう。」
 おまわりさんも ぴったりと さくらのふといみきに だきつきました。
 ぽ・ぽぽぽぽぽ・・・さくらのはなが ぽぽぽぽぽ と ひらいたよ。

 かえるに、つばめに いぬのおやこに おんなのこに おまわりさん
さくらのふといみきに ぴったり だっこ

「さぁ、みててね! いち にの さーん!」

 さくらのこえに みんながうえをみあげると
まんかいになった さくらのはなのはなびらが
ぶわーっと はじけるように そらへと まいあがりました。

 かえるも つばめも いぬのおやこも おんなのこも おまわりさんも
めをまんまるくして さくらのはなびらが くるくるおどりながら 
とおくへ とおくへ とんでいくのを みおくりました。

「すごーい! きれーい!」

 いつのまにか みんなのかおは にっこにこ。
そらには やさしい ゆうやけぐも。

 そろそろ おうちへ かえりましょ。

                              

©tukkin 2000.4

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