しろい くも

文 つっきん
晴れた日の 午後のこと。

ふうちゃんが ふっと 空を見上げると
ぽっかり もこっと 白い 雲

「あはは、しいたけみたい」

「しつれいだな。」

雲が ブッブーっと 小さなX印の雲をはきながら こういった。
「傘の つもりだったのに」

ふうちゃんは あんまり おかしくて くっくとわらった。
「見える、見える、傘にも 見える」
・・・でも やっぱり しいたけだ。

にこにこがおのふうちゃんと 傘のつもりの 白い雲。
「ねぇ、ねぇ どうして 傘になってみたの?」

「だって、あそこの家にも、そこの家にも、向こうの家にも
今日は色とりどりの傘がほしてあってさ、なんだかとっても気持ちが良さそうなんだもの」

そうそう、今日は梅雨のあいまの いい天気。
だから、あそこの家も、そこの家も、向こうの家にも たくさんの 傘がひなたぼっこ。

「いいね、雲は 何にでも変身できて。」
「きみだってできるさ。やってごらん。」

へんしーーん。
どっちが傘に見えるかな?

ふうちゃんは 両手をへの字に広げて 立ってみた。
しばらく じーーっと 立ってみた。

太陽が じんわり 近づいてきたみたい。
「あつーい」
汗がじんわり 背中を伝う。

ケロケロ、ケロケロ・・・
気持ちいい ケロ

いつのまにか ふうちゃんの影で カエルがひょっこり ひとやすみ。
あらら、こまった どうしよう。
ふうちゃんとっても気分は複雑。
・・・雲に はめられちゃったかなぁ
・・・カエルが 気持ちよさそうだから いいんだけどさ。
・・・まぁ、いいんだけどさ。
ふうちゃん しばらく 傘のまま。

「くくくっ、ふうちゃん なかなか やるねー。」
雲は 感心したように、おどけていった。
「しばらくそのまま。お客さんがいるからね。」

「わかってるよぉ。」
ツンと ふうちゃんがそっぽを向くと

「これで おあいこ。」
ツンと 雲も そっぽ 向く。

「ところで なんで しいたけなのさ?」
「あのね、昨日の晩ご飯で、しいたけの天ぷらを食べたの。
最初は、しいたけなんか と思ったけど、おいしかったの、すごーくね。」

「どれどれ?」
いよいよ 白い雲の変身、変身。
上へ向かって 2本のつのが
下へ向かって ひょろーんと のびて のびて のびて のびて
ピタッ

ふうちゃんの 胸へひっついた。

トクトク トクトク
トクトク トクトク

それは お医者さんの 聴診器。

ふむふむ 
「なるほど なるほど しいたけたちが 言ってますね。
きみの 元気のもと になれて うれしいって さ。
きみの しいたけに免じて ゆるしてあげる。
じゃぁね。ぼくは 行くよ」

「ねぇ、また 会える?」
 
ふうちゃんの うれしい問いかけに
ピンポーン 雲は ちいさな 丸を はきだした。

「きっとね。いつでも 会える・・・とは限らない。くっくっくっ」

ちょっと不思議な言葉をのこして 
雲は 流れるように 消えてった。

ふうちゃんが あしもとのカエルを見ると

ケロケロケロ
ありがとう ケロ。
ひとやすみ できたケロ。

ぴょこっと ぺこっとお辞儀して
カエルも元気に ぴょん ぴょん ぴょん 
草むらめがけて はねてった。

ケロケロケロ
今日はカエルがなくから 帰ろうっと。

それは 晴れた日の午後のこと。

©tukkin 2001.7

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